彼女が来たりて
角笛ふいて
let's DANCE
ああ
目玉焼きが
動き出す 動き出す
伸縮を繰り返し
なめくじのように
皿から滑り落ち
時計に向かって進む
ああ
目玉焼きが
たどり着く たどり着く
あなたが分裂して
二人になったとしたら
僕はどちらを愛するだろう
鏡のあいだで増殖した
少女たちの中から
一人の少女の手を引いた
ワルツを踊りましょう
ぐるぐると
うしろに行列従えて
わらわはインフルエンサー卑弥呼
クレープ屋さんに並んでは
神の御託を告げるのだ
バナナチョコ生クリームでお願いします
空飛ぶ玉座が
女王を運んで
島から島へ
海に反射した光が
女王の瞳孔に達する
そして女王は
上空から
一粒の涙を落とす
侍従たちは
城のテラスから
ジェット噴射の
もくもくを
見上げている
彼女はフロアに
ヒールをカツンといわせて
立つ
二本の脚は
カツ カツ カツ
とリズムを刻み
フワリとスカート
なびかせて
いきなり
ドリル回転
ダンスフロアは砕かれて
粉塵の中に
彼女は消えてった
ぐにゃぐにゃ
道路が
のたうちまわり
それが
喜びにうちふるえてる
大地だと分かり
僕はそしらぬ顔で
車を走らせる
文学的解釈に疲れてぼんやりと
冥府に行って帰ってくる
ふと気づくとあの子は
回送列車になりかけの
電車の座席にすわってた
青春を電車の暖房で育んだ
我らが女子高生たちは
その熱の余韻で将来の夫を選び
子育て三年目までをこなすと言う
ここは極東
海の近くを電車が走る